「こ、これでドアを」
鍵を受け取る時に手がふれあったのだが、
麻理は辛うじて白昼夢モードに入るのを堪えた。
ドアを開け、部屋に入った二人を襲ったのは、やはり大量の煙であった。
煙は、机から入道雲のように湧いてきている。
二人が駆け寄って見ると、不思議な事に入道雲は
机に置かれた小箱から湧いていた。

「中が燃えてるのかも」
麻理の言葉に頷き、志郎は恐る恐る箱に近づき、手の甲で触ってみた。
熱ければ直ぐに引くことができると思ったのだろう。

「あれ?熱くない」
志郎の予想を裏切り、箱は全く熱を持っていなかった。
燃えてさえ居ない。
ただ単に煙が出ているようである。
とりあえず箱を両手でしっかりと持ち、部屋の外に出た。

「いったい何が煙を出していたんだろ」
中を確かめようとした志郎が悲鳴をあげて飛びのいた。

「どうしたの?」

箱を指差したまま、志郎が叫んだ。
「動いた!」

その言葉に応えるかのように、箱がふわりと浮いた。
錯覚。風のせい。
でもそうじゃない。
確かに動いたし、風なんて吹いてない。
けれど言ってしまうとそれを認めてしまう気がする。
それは嫌だ。
それは怖い。
口ごもる麻理の心情を逆撫でする出来事が起きた。
箱の中から再び煙が出始めたのだ。
煙は徐々に固まり、人の形を成していく。