「うん。それぐらいなら何とかなるな。よし、茜、おまえの
役目は決まった。木の上からこいつを投げろ」

太郎丸が懐から取り出したのは、黒い球である。
「炸裂弾、という。ここに火をつけて、投げると
爆発するんだ。その時、中に入っている
巻き菱が散らばる。」

真剣な面持ちで聞き入る茜。
「相手に当たらなくていい。
近くで爆発すれば充分だ。出来るか?」

「大丈夫。やる」
黙ったまま、頷く。
その顔が心なしか、青ざめている。

太郎丸は、例の微笑みを茜に向けた。
「茜。これは鬼退治だ。
俺たちは、鬼退治に行くんだ。いいな?」

太郎丸は、茜が人を殺す痛みに耐えることが
できるかどうか危ぶんだ。
その為、直接、手を下さず遠くから
炸裂弾を投げる役目を与えた。
血で手を汚すのは、俺たちだけで良い。
そう考えたのだ。
何より、茜への危険も減る。
闘いが始まったら、庇うことができないのだ。

少し練習したせいか、茜の投石は様に
なってきた。
宿に戻り、飯を頼む。

美味そうに飯を食う太郎丸を見ながら、
茜は、ぼんやりと「この人の飯を作って
暮らしたいな」と考えている。

「なんだ。俺の顔に何か付いてるか」

「え!い、いや何でもないよ」
慌てる茜。

「ねぇ、あんたの村って、もう誰も居ないの」

「いや、おばばが待っててくれてる。
鬼退治が終わったら、必ず帰るって
言ってある」

「そうか…帰るところ、あるんだね。いいな」

「来るか」

「え?」

「おまえも一緒に来るか。うめぇぞ、雉鍋は」

「いいの?」

「なんも無い村だ。村とも言えねぇがな」

でも、あんたがいる。
その言葉を無理矢理飲み込んで、
茜は、ただ頷いた。