昨日は穏やかな晴天だった。
合格発表まで一時間半ほど時間が空いたので、
琵琶湖畔までの緩やかな坂をぶらぶらと下って行く。

九割方、合格する自信は有ったので肉まん一つ買って、
『肉まんは憎まん』とか言いながら。

やれやれ、と自ら呆れながらね。

ぽかぽかと陽があたるベンチに座り、群れ集う鳩を見て…鳩じゃないな?

ユリカモメか何かだ。




まるでヒッチコックの映画だねと愉快がる俺の隣に、小さなおばあちゃんが座った。

おばあちゃんは、手提げからラジカセを取り出すと、演歌を流し始めた。

先ほどまでのヒッチコックが、いきなり演歌の花道状態になる。

津軽海峡から天城越えして能登はいらんかね~と続く。

どうやら、ご当地演歌がお好みのようだ。


俺は演歌が嫌いではない。
日当たりの良いベンチで、琵琶湖を眺めながら聴く八代亜紀もなかなかのものだ。

そのうち、おばあちゃんが小声で歌い始めた。
実に楽しそうに歌う。

つい、つられて口ずさんでしまった。

おばあちゃんが、にんまりと微笑んでいる。
「兄さん、ええ声やな」

しまった。
何故だか俺は、じいちゃんばあちゃんに声をかけられやすいのだ。

「いやぁ、ばあちゃんに比べたら大したこと無いっすよ」

話が弾みだした(笑