東本願寺さんの前辺り、鳩が沢山群れている。

鳩にあげる豆も売ってるからね。
それ目当てなんだろう。
俺は、この鳩という生き物を見ると、どうしても追いかけたくなるのだ。
足元に寄ってきた奴をトトト、と追い詰める。

鳩にしてみりゃ、
『お。なんだなんだこいつ』
てな気持ちだろうな、
慌てて走る。
なおも追い詰める。

『しつこいね、どうも』
てな感じで飛び上がる。
これはこれで俺の勝ち。
敵に背中を見せた時点で鳩の負け。


ところが今日、なかなかの強者が現れたのだ。
さすが、鳩の本場だけある。

奴の名を仮にジャックとしておこう。

ジャックは、俺の進路をふさぐ位置でこちらをジッと睨みつけてきた。

面白い、おそらく本願寺鳩のリーダーに違いない。

無言のまま、勝負は始まった。

俺が近づく。
ジャックも近づいてくる。

なおも近づく。
ジャックは逃げようともしない。

凄い。

こんな根性のある鳩は初めてだ。

だが俺も、対鳩戦では無敗を誇った男だ。
退くわけにはいかない。
来い、ジャック。

3m。

2m。

奴はまだ退かない。


「乱」

黙っててくれ、嫁はん。
これは俺とジャックとのプライドを賭けたチキンレースなんだ


「鳩はチキンじゃないよ」


む。些末な事を

わぁ、いつの間にか足元にジャックが

ひぇぇ

鳩って間近で見ると目が怖いやん



というわけで、ジャックとの闘いは、俺の対鳩戦で初の黒星となってしまった。

闘鳩戦士よ、もし東本願寺さんに立ち寄られたら気をつけるがよかろう。

片目に傷跡のある鳩、ジャックは強いぜ。