明子は、今年の春、高校を卒業して直ぐに食品売り場で働き始めたらしい。

いつもは早朝の品出しを担当していたが、一昨日から年末シフトで居残っていたのだという。

明子を見た途端、谷山は長い販売員生活で初めての経験をした。

店頭で泣いてしまったのだ。

「これが…そのプレゼント」
明子は、震える手で丁寧にラッピングを解いた。
中から現れた人形を胸に抱え込む。

「お母さん」と一言だけ言ったきり後が続かない。

カードには、
『いつもおかあさんをたすけているね。
あきちゃんはとてもよいこなので、サンタさんからプレゼントです。
これからもえがおでね』
と書かれてあった。

明子は、あきちゃんに戻り、しばらくの間泣き続けた。

そしてもう一度カードを声に出して読んだ。

『これからもえがおでね』

「はい。お母さん」

明子は見事な笑顔に戻り、谷山と直美に礼を述べて売り場に戻った。

「やっと渡せたなぁ…」谷山がしみじみと見送る。


「主任」

「ん。なんだ?」

直美はポケットからティッシュを取り出し、谷山に渡した。

「あ…すまん。ありがとう」

谷山は慌てて涙を拭いた。

「主任、オモチャって何だか暖かいですね」

直美の言葉に、谷山は当たり前だとばかりに、重々しく頷いたのだった。