俺の塩というカップ焼きそばがある。
塩味焼きそばの草分け的存在ではあるまいか。
シンプルな塩味と、お湯を入れて出来上がるまで僅か1分の手軽さがウケた。
追従するメーカーも多かったように記憶している。

カップ麺をあまり食べなくなって久しい。
いつの間にか、俺の塩も手に取らなくなっていた。

先だって、娘を連れてドラッグストアに買い物に出かけた折のこと。


「お父さま。なんだか爽やかで素敵な夜ですねぇ」

…何が欲しい


「まぁいやですわお父さま。リップクリームを買ってくださいイチゴの匂いのを買ってください」

いいけどさ。たまには変わった匂いのを買えば?

錆びた鉄の匂いのリップとか、焦げたサンマの匂いとか、

学校の水飲み場の片隅から見つかった雑巾の匂いのリップとか


「イチゴでいいです」


ふん。フロンティアスピリットに欠ける青春やな

「あ。お父さん。これおかしくない」


なにが。
うむ、言われてみりゃそうだけどな






「塩かタラコかどっちやねん」

俺の塩、だと正確ではないな


「俺のタラコだよね」


大きい声で言うな


「え?俺のタラコでしょ」


女子高生がそんなことを大きな声で言うなてば