「帰ったぞ」
克実は上機嫌である。
十万近く勝てたのだ。

「あれ?灯り点いてないな…。なんだよ、居ねぇのか」

克実は居間の灯りを点けた。
途端に、うわっ、と悲鳴をあげた。
暗闇の中に悦子が居たのだ。

一点を見詰めたまま、口もきかない。

「悦…子?」
近づいた克実はテーブルの上に置かれた携帯に気付いた。

(ヤバい!中身見られたか?)

克実が焦るのも無理は無い。
その携帯には、克実が騙している女達全員のリストが入っているのだ。
金を持っている順にランクを付けてある。

「悦子…?」

悦子は、その時初めて克実に気付いたように顔を上げた。

「…あ、お帰りなさい。冷めちゃったから、もう一度作るから座って待ってて」

何か、逆らえない口調に押され、テーブルにつく。

悦子は台所に立ち、フライパンを持った。

「すまないな、手間とらせて…」

克実の言葉は途中で途切れた。
背後に立った悦子が、持っていたフライパンで思い切り、克実の後頭部を殴ったからだ。

「ぐぶ」
妙な音を立てて克実が立ち上がろうとした。

その頭めがけて、何度も何度もフライパンを振り下ろす。
ゴン、と重たい音が居間に響いた。
完へ