日本語は美しい言葉である。
その美しい日本語が、徐々に失われようとしている。
事態を重く見た政府は、美しい日本語を守る会を
発足し、日本語強化法案を成立させた。
無作為に抽出された企業や店舗において、
一定期間、外国語を使用することは出来ない。
全ての言語を日本語にしなければならないのだ。

今日の昼間、俺が立ち寄った某ファーストフード店に
白羽の矢が立ったらしい。
すでに看板から英語が消えている。

「いらっしゃいませ。今日はこちらでお召し上がりですか、
お持ち帰りですか?」

あ、テイクアウトで。

「…お持ち帰りですね」

あ。そうか、客の方も使っちゃ駄目なんだね。
ごめんごめん。持ち帰りで。

「お品書きをどうぞ」

お品書き…て。
えぇと。ハンバーガー…って日本語で何て言うんだ?
円く固めて焼いたつくね肉をパン…パンも駄目か、
小麦粉で出来た日本で言うところの米にあたる食材で
挟んだやつ。
つくね肉を二重にしたやつで。
それと、つくね肉を照焼きにしたやつ。
飲物は…この黒い炭酸飲料。
中ぐらいの大きさで。

「はい。ご注文はこれとこれですね」

あ。ずるい!

「御一緒に芋はいかがですか?」

芋。まぁ確かに芋だけど。
じゃあ、芋を中ぐらいで。
しかし凄いな。お品書き全部日本語だ。
笑顔無料、って書いてある。

翌週。

さて、今日は珈琲でも飲むかな。
あ。まただよ、また英語禁止かよ。

「いらっしゃいませ」

えぇと…アカネ科に属する熱帯性低木に実った木の実の、
果肉や皮を取り除いて、乾燥させてから炒った豆を
磨り潰して、高い圧力をかけて抽出した、通常のものより
濃い液体に牛乳を入れたものをください。
はぁはぁはぁ…

「大きさは?」

大きさはトール…じゃないや、高。

「アカネ科に属する熱帯性低木に実った木の実の、
果肉や皮を取り除いて、乾燥させてから炒った豆を
磨り潰して、高い圧力をかけて抽出した、通常のものより
濃い液体に牛乳を入れたもの、高い大きさで。
ありがとうございます。」


…プロ…いや、高度の職業適性師やな、あんた。