この季節、外を歩いていると、何でも無い場所で
蜘蛛の糸にまとわりつかれることがある。
おそらく、風に乗って漂って来るのであろう。
私は妙に、この蜘蛛の糸にからまれやすい。
歩いていていきなり、激しく顔を拭うのであるから、
傍から見ると変な人に見えるかもしれない。

とある地方へ一泊二日で出張した時のことである。
用事を済ませ、宿泊先の旅館へと続く田圃道を歩こうと試みた。
のんびりと虫や蛙の声でも聴きながら歩けば、日頃のストレスが
解消されるかもしれぬと考えたのだ。
風も無く、蒸し暑い夜であった。
汗が沸々と湧き出してくる。
風情どころではない。たちまち後悔しながら尚も歩く
私の体にまた、蜘蛛の糸が絡みついた。

(あぁもう。うっとうしい)
流石に田舎道である。
普段よりも大量に、からみついてきた。
拭っても拭っても、それは次から次へと、
引っ切り無しに顔や腕にまとわりつく。
じっとりと汗ばんでいるから、尚の事なのだろう。

「だぁ。なんだよもう。いい加減にしろって」
すどん、と続いた田圃の一本道だ。
周りには民家一つ無い。どんよりと曇った夜空では、
所々に立つ電柱の灯りだけが頼りである。
しつこい蜘蛛の糸を徹底的に取り去ろうと思った私は、
その灯りの下で立ち止まり、腕を見た。