政子は目覚めた時、枕元を手探りする。そこには必ずプルートがいる。

夜通し遊びまわったプルートは、疲れきった体をそこに横たえるのだ。
政子が優しく撫でると、喉を鳴らした。

闇を切り取ったような黒猫に、プルートと名付けたのは政子の怪奇趣味のせいだ。

ポーの作品『黒猫』に出てくる猫の名前がプルートなのだ。
ポーを愛読する政子は、黒猫を手に入れたら雄でも雌でも、絶対にプルートと付けるつもりだった。

プルートと政子は、良く似ている。
夜遊びが大好きで、毎晩恋の相手を変えるのも同じ。

政子は、プルートに避妊手術を受けさせていない。

自然のまま、生を謳歌させてやらなければ、彼女が生きてきた意味が無い。
それが彼女の理屈である。
当然、子猫が産まれた。

避妊手術させるのも、生まれてきた子猫を捨てるのも同じだとうそぶき、政子は子猫を庭から外に捨てた。
すぐそこに川が流れているのだ。
子猫を捨てる政子をプルートがジッと見つめていた。
心なしか、その瞳が潤んで見えた。


プルートは相変わらず夜遊びを続けていたが、政子の方は夜遊びが無くなった。
子供ができたのだ。

二へ