「それで?育てるつもりなんですか」
イブがやれやれ、とばかりにヒゲを寝かせる。

「無茶…ですかね」
ヒナは、福の尻尾にくるまってぢぃぢぃと鳴いている。

「餌はどうするんですか」

「あの…なにを食べるんでしょ」

イブのヒゲが更に平たく寝る。

「…ツバメの親は飛んでいる虫を捕まえては、ヒナの元へ運ぶんです。福やん、出来ますか」

福の垂れた耳は益々垂れた。

「言っておきますが、乱さんも綾さんも当てにしないように。人間の臭いが付いたツバメは群れに戻れないですよ」

しょぼくれた福は、ぐぅの音も出ない。
その間にもヒナはぢぃぢぃと鳴き続けている。

「やれやれ。とりあえず待っててください」

イブはゆぅるりと立ち上がると庭先へ向かった。

木の幹や、家の塀を利用して辺りを飛び回る。

福の前に戻って来た時、イブは餌になる虫を捕まえていた。

「…手伝うしかないですか」

ヒナのクチバシに虫を運びながら、イブは笑った。

「ヒナに餌を運ぶ猫。なかなかどうして面白い」

福は笑わない。
イブの優しさが身に沁みたのだろう。

黙って頭を下げているだけであった。
四へ