「これ、使ってください。もうわたしには
必要有りませんから」
熊が包みを解くと、桧の箱が現れた。
中には、あのビードロ釉が入っている。

「これ…茉莉ちゃん、これはだめだ。こんな大事なもの
もらえない」

「いいんです。側にあると哀しくて…もう、私には
地図はいらないから。
熊さんの料理が乗るなら、父も喜びます。」

「熊。もらっときな。使ってこそ器、だろ?」
黙り込んだまま、熊は皿を持った。
ためつすがめつ見、溜息をつく。
「すげぇなぁ…ほんと、伊賀の山そのまんまだ」

「ほんとに辞めちまうのかい?」

「はい。整理が終わり次第、火は落とします」

皿を洗っていた熊が、その手を止めた。
「ありゃ?」

「どうした?熊」

「師匠、これって…湿気ふくんだら何か出てきた」
熊が皿の裏側をねこやに示す。
確かにそこには、何かの地図らしきものが浮かび上がっていた。

十二へ