朝からどんよりとした曇り空である。
けれど幸太は保育園に行くことが嬉しくてたまらないらしい。

いつもどおりに町田先生に預ける。
その時初めて恵子は、町田先生の不思議な色の瞳に気付いた。
凄いほど綺麗な緑色なのだ。
少しどぎまぎしながら保育園を出た。
なんだか覗きに行くのが待ち遠しい。
午前中だけなのに、いつもより勤務が長く感じられたのはそのせいだ。

挨拶もそこそこに、恵子は保育園に向かった。
幸太のいる教室は、一階の一番右端だ。
庭に咲く花を踏まないように、そっと進む。
たどりついた教室は、大きな窓が開いていた。

部屋の中から笑い声が聞こえる。
(ふふ、みんな楽しそうね。幸太の声もするわ。曇り空だから
今日は部屋の中で遊んでるのね)

まるでコソ泥みたいね、小さくつぶやきながら部屋の中を
覗き込んだ恵子は戸惑った。

誰も居ない。
教室の中は、ガランとした空間が広がっているだけだ。


五へ