晃は人並みをかきわけ少年に近づくと、傷ついた頭に手をかざした。
その手から柔らかな光が溢れだし、少年を包んだ。
村人達が息を呑む前で、少年の傷が塞がっていく。
五分後、少年はベッドに起き上がり、何事も無かったように笑った。

「良かった。じゃあ、僕はこれで。今までありがとうございました。
次の定期船で島を出ます」

そう言って出て行こうとする晃を村人は懸命に引きとめた。
その力を目の当たりにした村人達は、いざという時の保険として
晃を島に置いておきたかったのである。
晃は断りきれずに、一年だけという約束で島に残ることになった。

晃へ食事を持って行くのは、仁美の仕事である。
彼女が自ら望んだのだ。
8才の少女ながらも、仁美は晃に淡い恋心を抱いていた。
毎日、晃の顔をジッと見つめる。
その笑顔が大好きなのだ。
そして、毎日見続けたからこそ、仁美は気づいてしまった。
夕食を届けに来た時のことだ。

「晃にいちゃん。ねぇ、不思議だね。兄ちゃんの影が薄いよ」

「うん?あ、あぁそうなんだ。仁美ちゃんすごいね、分かっちゃったか」
例の屈託の無い笑顔で、そう答える晃に仁美は尚も訊ねた。

「なんで?なんで薄いの」

晃は、少し悲しげな顔を見せ、仁美を見つめた。
「誰にも言っちゃダメだよ。約束できる?」

「うん」

「じゃあ仁美ちゃんにだけ教えてあげるね。実はね、僕、人や動物を治す度に
影が薄くなるんだ。多分、少しずつ命をあげてるんだろうな」