「この写真が何か?」

「右の奥に大きな時計が見えるでしょ?」

確かにそれはあった。 すでにセピア色に変色している
写真のため、はっきりとは判らないが大きな置時計だ。
何となく、熊は『おじいさんの古時計』という歌を思い出した。

「ありますね。えらく立派な時計だ。でも…針が無いのかな?」

「そうなんです。針の無い時計なの。お母様がね、時々
おっしゃるんです。死ぬ前にもう一度だけ、
あの時計を聴きたいって。それまでは死ねないって」

「時計を聴く?仕掛け時計だったんですか?」
時刻が来ると、中に仕掛けてある人形たちが
現れて音楽を奏でるのだろう。
熊はそう考えた。

「多分、そうだとは思うんです。親戚の人達に訊こうにも
ほとんど残ってらっしゃらないし…一人だけ覚えている
方がおられたんですけど、確か、生活に困ったから
売ったはずだって…」

「お母様…芳江さんでしたっけ。何かおっしゃってないんですか?」

照美はうつむいて目頭を押さえた。
「…もう、息子の事もよく判らないみたいで…」

七へ