里美は自分より遥かに大きい医師の胸倉を掴んだ。

「こら。さっさとやらないと、ボキンパンチ食らわすぞ、あぁっ?!」
セリフと一緒に、慣れ親しんだボキンちゃんの戦闘ポーズを取る。
海外の国で、空手というのは東洋の神秘の技と思われているのだ。
里美のそのポーズは、医師に得たいの知れない恐怖を与えた。

「わ、判ったよ、やるよ、すぐに。」
結局、亜熱帯マラリアの初期段階であった為、俊輔は病室で
順調に快復し始めた。
里美が持ち込む和食もその力になったのは言うまでも無い。

数日後、俊輔はその腕にもう一度里美を抱きしめていた。

「里美、ありがとう」
里美は、泣き出したまま言葉が出せない。
その涙を唇でそっと拭い、俊輔は優しく里美にキスをした。

「これを見て。ルアンダの国旗だ」
俊輔が示したのはルアンダの国旗である。
綺麗に三色に塗り分けられている。

「一番上の青色は青空と希望を、真ん中の黄色は平和と協調を、
一番下の緑色は豊かな農業と繁栄を象徴しているんだ。
そして、右上に輝く太陽は、国民の団結と未来への明るい展望を表している」

俊輔の胸の中で、里美は黙って頷いている。

「この国は太陽が見守っていてくれるんだ。でも、君という太陽は僕一人のものだ」
俊輔は里美を強く抱きしめた。

里美には、ボキンちゃんは二度とできないかもしれない。

悪の手先に太陽は似合わないからだ。