俊輔はいつの間にか眠っていた。
うつろな頭に、奇妙な音が響いてくる。
規則的な音だ。

トントントントン…

俊輔は、母のことを思い出していた。
小学生の頃に亡くなった母が、毎朝、台所で立てていた音だ。
まな板を包丁が叩く音。
(母さん、今日はワカメの味噌汁か…)

思わず声が出た。
「母さん…」

よろめきながら起き、台所に向かった俊輔は
えらくリアルな夢だな、と頬をつねった。
「痛い…」

そこに居たのは彼の太陽であった。
里美が、Tシャツにジーンズに白いエプロンを着け、
味噌汁を作っている。

「え…なんで?」

その声に里美が振り向いた。
にこにこと微笑んでいる。

「起きた?俊輔君。さ、さっさと朝ご飯食べて病院行くよ。
全くもう、勉強ばかりしてるから体が弱ってるんだよ。
マラリアなんかに負けてどうするっ!」

「う、うん。いや、違う。上岡さん、何でここに居るの?」

五へ