「わしが行ったやつはな、本物も置いてあったんや。
ホルマリンに漬けた手ぇやら、目玉やら、
足やら、生首やら」

中に一つ、生首のホルマリン漬けが展示されてあった。
難しい字は読めなかったが、周りの大人の言葉から
『連続殺人犯』の首だと解った。
祖父は、仲間に豪胆な所を見せようと、
その首を睨みつけて、
「人殺しかい。ろくでも無い奴やな」
と笑いかけたそうだ。

「そしたらな、いきなりな、その首が真っ白にふやけた目玉を動かしてな、
ギロリとわしを睨んだんや」

周りの大人達には見えてない。
仲間達にも見えていない。

「そんでな、わしに向かってな、こう言うたんや。
『なんならお前も殺したろか』
頭に直接ジンジンと響いたんや。
そやからな、人体の標本なんぞがある所には
わしゃ行きとうない」


が、結局、祖父は智史に付き合う事になった。
パンフレットを見せた途端、
あ、これならええか、と腰を上げたのだ。
不思議に思った智史は、その理由を訊ねてみた。

「あんな、この標本な、全部が中国の人やねんて。
ほら、ここにそう書いたぁる。
わし、中国語解らへんから、例え何か言われても
大丈夫や」

確かに、心霊現象に通訳は無いものな、と
智史は妙に納得したらしい。