私が今、向かっているのは福岡県。
会おうとしているのは、ぬりかべさんである。
あ、さんづけしちゃった。

小学生の頃、つけられたあだ名がぬりかべであった。
ただ、デカイというだけの理由であったが、
むしろ私は嬉しかった。
鬼太郎の仲間の中でも、ぬりかべが一番好きだったからだ。
そのぬりかべに会えるのだ、これほど嬉しいことは無い。
酒好きの彼の為に、取って置きの日本酒を用意した。

夕陽に赤く染められた海をぼんやりと見つめる
白い大きなかべ。
居た。彼だ。

すいません、お待たせしてしまいましたか?

「つくねさん?いや、今来たところだから」
おそらく、嘘だ。彼の優しさがそう言わせるのだろう。

海を見てたんですか?

「あ?あぁ。好きでね、海が。えぇと、砂かけの婆様から
聞きましたが、妖怪の強さをお調べになってるとか」

はい、そうなんですが…今日はそれはいいです。
私、ぬりかべさんと飲みに来ました。
それだけです。これ、神亀という酒です。

「あ、そうですか。こりゃ嬉しいな」

ぬりかべは小さな目を細めて笑った。
まだ温もりが残る砂浜で、塩だけをあてに
しばらく杯を交わしているうち、ぬりかべの
気持ちが解れてきたのだろう、
饒舌になってきた。