あぁ。まぶしいなぁ。
出囃子の音、客席の
ざわめき。

わいは高座が好きや。
落語が好きや。

さ、いっちょいて
こましたろかい!



高座に立った吉次は
直前まで酸素吸入を
受けていたとは思え
ない声量で話し始め
た。

かけたネタは
『弱法師』。
きっちりやると、
45分の大ネタだ。

それを吉次は物の見事
に話しきった。


高座の上手で米蝶が
溢れる涙を拭おうとも
せず、聞き入っていた。


なんちゅうこっちゃ。
こんなええ噺家、もう
聞かれへんとは…

親不孝もんの弟子や。
そやけど、最高の弟子
や。



吉次は正月を迎える
事無く、旅立った。

米蝶一門が声を揃え、
彼を見送る。
それは吉次が最も得意
としたネタ
『地獄八景亡者戯れ』
からのセリフだ。



「その道中の賑やかな事~っ!」