琴美はその頃、医師と
面談していた。
その内容は最終宣告
と呼ぶに相応しいもの
だった。

両足とも脛部を切断。
その後、化学療法で
5年間治療を続け、
様子を見る。
転移・再発が無ければ
成功。

淡々と語られる真実の
前では、いつもの
勝気な軽口も出る筈が
無かった。

琴美は真っ直ぐに医師
を見つめ、お願いします
と一言だけ言った。

涙を流しながら車椅子
を押す母に、琴美は
努めて明るく
ふるまった。

「母さん、祐輔君に
ちゃんと渡して
くれた?
ビックリしたでしょ、
あんな金髪の子で。」

「え?えぇもちろんよ。
祐輔君ね、必ず優勝
して見せるって。」

「あはは。頑張れ
青少年。がんば、れ。
あたしはもう…二度と
会うことはできない。
ご褒美もあげられ
ない。
だって、背伸びする事
もできないもん。」

そうつぶやいて、琴美
は初めて涙を流した。

今まで我慢してきた分
その涙は、いつまでも
止まりそうになかった。
琴美は、うつむいた
まま涙をこぼし
続けた。