公演の当日、あふろ君はビシィッと効果音がするぐらいの
スーツを着ていた。
依然として髪型はアフロのままだ。
なんだか、70年代初期のソウルミュージシャンを
思わせる出で立ちだった。
手にB4サイズのバッグを持っている為、
まるっきり正体不明のサラリーマンである。
座席は二階席の端であったが、あふろ君は初めてみる
バレエに夢中だった。
今まで見たことの無い世界、自分には全く縁が無い、
そう思い込んでいた心が感動に握り締められる。
そして場面は第四幕へと変わり、待ちに待っていたななちゃんが
舞台に登場してきた。
「あ。いた」
一瞬にして見分けてしまう。
あふろ君のみならず、おそらくこの場に常連客が居合わせたら、
全員がななちゃんを見分けただろう。
それほどまでに輝いてみえた。
舞台に咲いた花の中で、一際目立つ花。
それがななちゃんだった。
あふろ君は、いつのまにかハンカチをグショグショにして
泣いていた。
公演が終わり、しばらくは外に出られないほど、泣いてしまった。
思えばそれが災いしたのかもしれない。
プレゼントを渡そうと、決死の思いで出待ちをしたが
結局、ななちゃんは姿を現さなかった。
そして、その日以来、ななちゃんはつくね亭に来なくなった。
あふろ君はバイトが終わるたびに、公園で時間を潰すようになった。
もう一度、妖精が舞い降りるのを待っているのだ。
あの日、結局渡しそびれたプレゼントを持っている。
そんな日がもう、10日も続いている。
「このままじゃ、潰れちまうな…」
翌日、熊は、チラシに記入されていたバレエスクールに電話をかけてみた。
ななちゃんとしか判らないが、熊が言った特徴で直ぐに判った。
ななちゃんは、故郷へ帰っていた。
九へ
スーツを着ていた。
依然として髪型はアフロのままだ。
なんだか、70年代初期のソウルミュージシャンを
思わせる出で立ちだった。
手にB4サイズのバッグを持っている為、
まるっきり正体不明のサラリーマンである。
座席は二階席の端であったが、あふろ君は初めてみる
バレエに夢中だった。
今まで見たことの無い世界、自分には全く縁が無い、
そう思い込んでいた心が感動に握り締められる。
そして場面は第四幕へと変わり、待ちに待っていたななちゃんが
舞台に登場してきた。
「あ。いた」
一瞬にして見分けてしまう。
あふろ君のみならず、おそらくこの場に常連客が居合わせたら、
全員がななちゃんを見分けただろう。
それほどまでに輝いてみえた。
舞台に咲いた花の中で、一際目立つ花。
それがななちゃんだった。
あふろ君は、いつのまにかハンカチをグショグショにして
泣いていた。
公演が終わり、しばらくは外に出られないほど、泣いてしまった。
思えばそれが災いしたのかもしれない。
プレゼントを渡そうと、決死の思いで出待ちをしたが
結局、ななちゃんは姿を現さなかった。
そして、その日以来、ななちゃんはつくね亭に来なくなった。
あふろ君はバイトが終わるたびに、公園で時間を潰すようになった。
もう一度、妖精が舞い降りるのを待っているのだ。
あの日、結局渡しそびれたプレゼントを持っている。
そんな日がもう、10日も続いている。
「このままじゃ、潰れちまうな…」
翌日、熊は、チラシに記入されていたバレエスクールに電話をかけてみた。
ななちゃんとしか判らないが、熊が言った特徴で直ぐに判った。
ななちゃんは、故郷へ帰っていた。
九へ