「こんなところに運命の人が居ただなんて。
僕はなんて幸せ者だろう。さ、君も一緒に会議に加わっておくれ。
将来の社長夫人として皆に紹介するから」
逸美は満面に浮かぶ笑みを無理矢理押し隠し、
手早く、糸の固定液を己と誠一の指に振りかけた。
これで誰も邪魔できない。
「皆さん。突然で悪いのですが、ここで僕の婚約者を紹介します。
さ、逸美さん。皆さんに御挨拶して」
逸美は優雅に会釈した。
すでに心はセレブである。
重役達が皆、一斉に逸美に頭を下げた。
「では議題の続きを。若社長、先ほどの結論で決定ということで?」
「うん。仕方ないね、これ以上は無理でしょ」
「判りました。甚だ残念ではありますが、破産ということですな」
「残念です。では早速、会社更生法の適用を申請してください」
え?え?破産?破産て何?
「逸美さん、僕一人じゃ不安だったけどね、今なら君が居る。
君と二人なら頑張っていけるよ。ありがとう、運命の人」
逸美は必死で糸を解こうとしている。
だが、喪黒商会の商品は完璧なのだ。
固定液は存分に己の役目を果たしていた。
糸を切れば、そうよ糸を切れば。
無駄である。
幽体に近い素材で作られた糸である。
現世の物で切れる筈が無い。
ハサミにしようか、包丁がいいか。
それともナタで一気に。
先ほどから、逸美は血走った目で自分の小指を見つめている。
僕はなんて幸せ者だろう。さ、君も一緒に会議に加わっておくれ。
将来の社長夫人として皆に紹介するから」
逸美は満面に浮かぶ笑みを無理矢理押し隠し、
手早く、糸の固定液を己と誠一の指に振りかけた。
これで誰も邪魔できない。
「皆さん。突然で悪いのですが、ここで僕の婚約者を紹介します。
さ、逸美さん。皆さんに御挨拶して」
逸美は優雅に会釈した。
すでに心はセレブである。
重役達が皆、一斉に逸美に頭を下げた。
「では議題の続きを。若社長、先ほどの結論で決定ということで?」
「うん。仕方ないね、これ以上は無理でしょ」
「判りました。甚だ残念ではありますが、破産ということですな」
「残念です。では早速、会社更生法の適用を申請してください」
え?え?破産?破産て何?
「逸美さん、僕一人じゃ不安だったけどね、今なら君が居る。
君と二人なら頑張っていけるよ。ありがとう、運命の人」
逸美は必死で糸を解こうとしている。
だが、喪黒商会の商品は完璧なのだ。
固定液は存分に己の役目を果たしていた。
糸を切れば、そうよ糸を切れば。
無駄である。
幽体に近い素材で作られた糸である。
現世の物で切れる筈が無い。
ハサミにしようか、包丁がいいか。
それともナタで一気に。
先ほどから、逸美は血走った目で自分の小指を見つめている。