誰かが歌っている。

オルゴールに合わせ、微かな声で歌っている。

皆がその声の主を探した。

芳江であった。
芳江が歌っている。

「眠れ…眠れ…母の胸に」

武良は目を潤ませて母を見つめた。

「その歌は、いつも母さんが歌ってくれた歌だ。母さんが…」

芳江はあたりを見回した。
「泣かずにねんねしなさいね、母さん、歌ってあげるから」

「母さんっ!」
武良は号泣している。

オルゴールが鳴っている間だけ、芳江は母に戻った。


オルゴールの美しい音色は、そこにいた
全ての者に懐かしい時を取り戻してくれた。

熊もまた、母のことを思い出した。

慌てて新タマネギを刻み始める。

これなら涙を流しても誤魔化せる。
そう考えたのだった。

いぶがカウンターの下から、そっとおしぼりを渡した。