「石にかじりついてでも、絶対にたどり着きます」

エリザベスカラーも外してもらい、チャイはブルッと武者震いをした。

「県境まで送ろうか?」

「大丈夫、線路沿いに行きますから。
…福さん、僕…犬としては失格ですかね。飼い主から逃げるなんて」


福はチャイの前足を優しく撫でた。

「飼い主に忠誠を尽くすより恋を選ぶ、か…中にはそんな犬が一匹ぐらい居てもいいさ」


気をつけて行けよと、高く尻尾を上げ、先を少し曲げる。

それが福の最大限の親愛の証しと知るチャイは、泣きそうな顔で同じように尻尾を立てた。


そして駅に向かって歩き出した。

一度も振り向くことなく歩いて行った。

その姿が見えなくなるまで福は尻尾を立て続けていた。