「えぇと、手帳に戻りたい年月日を記入して…
高校を卒業した頃かな」
よし、とリセットボタンを押す。

みゅわん、と妙な音を立て、空間が歪んだ。
一瞬の立ち眩みの後、仁は高校生に戻っていた。
早速、稽古を開始する。血の汗を流し、毎日毎日飽く事無く仁は体を鍛えた。

そして、何度となくリセットボタンを押し、経験値を積み重ねていった。

「どうじゃな、調子は」
例によってニンマリと粗茶ノ水博士が現れた。

「バッチリです。今度こそ間違い無く合格です」

「それは何よりじゃ。…あ、ところで」
胸を張る仁に粗茶ノ水が訊いた。

「何の試験を受けるんじゃ?」

「プロレスの新弟子審査すよ。丁度今から行くところです」

ご一緒しますかと誘われ、博士は従った。
モニター結果を目の前で確認するつもりである。確かに仁は、凄まじい体に変貌していた。
これなら、新弟子審査は一発合格に間違いない。
「お願いしまーす!」

「またあんたか。何度来ても無駄だと言ってるだろうがっ!」

「でも、俺はどうしてもこの団体でプロレスをやりたいんだ」

「無理だってば!看板よく見ろって!新日本女子プロレスって書いてるだろ!
男は無理なの!」


「くそ、まだ鍛え足りんか」

「…ま、気の済むまでやんなさい」


粗茶ノ水博士は仁の為に性転換装置を発明してやるかと思い立ったが、やっぱり面倒くさいので止めたのだった。