花は何にしようかと迷ったが、母の好きな百日草に決めた。
結果的に、これが良かったのである。
百日草は暑い日差しの下でも丈夫に咲き続ける。
その名の通り、百日保つかと思わせるほどである。
丈夫なだけではない、その姿は可憐に揺れ、見る人を癒す。

元気だった頃の母は、他のどの花よりも百日草を愛した。

「君は元気で綺麗だ。まるで、百日草だ」
亡くなった父さまがそう言ったのよ、
でも全然丈夫じゃなかった、と母はいつも寂しげに微笑む。
良太郎は、何も言えずにただ俯いているしかない。

沢山植えれば、母が伏せる部屋からも見えるかもしれない。
そうすればもう一度、母が元気になる気がしてならない。

良太郎はまた、のめりこむように畑仕事を続けた。
その成果は如実に現れ始めていた。

村人達は、茂助山の麓がいつの間にか、華やかに彩られていくのを
発見し色めきたった。
「なんじゃあれは」
「良太郎の花畑か」
「あやつ、いつの間にあれほどのことを」

貞治を先頭に畑に向かう。
村人達は、良太郎の花畑を見て息を呑んだ。
三反の荒れ野が、百日草で覆われている。
まるで天界のような光景に、思わず涙する者も居た。

「これはもう…良太郎のものじゃな」

「うむ。この荒れ野をここまでにしたのは、あやつの成果だ」

口々に褒めそやす村人に囲まれ、得意満面の良太郎は、
自分の家がある方角に向かい、大きく手を振った。