「なによ。逃げろって…」
先程も書いたが、麻理は到って素直な性格である。
逃げることにした。
虫の知らせというか、シックスセンスというか、とにかく
不安な気持ちが、店長のメールで尚の事大きくなったのだ。
だが、とりあえず逃げるにしても理由を知りたい。
知らない方が良いような気もするが、今一番役に立つ武器は
情報である。

麻理は、もう一度店長にメールを送ろうとした。
その瞬間、携帯が鳴った。
荘厳な室内に
『フンダリー ケッタリー』
が高らかに響き渡る。
一部の人には言わずと知れたケロロ軍曹のオープニングテーマである。
店長からの着信メロディーであった。

「はい、麻理です」

『麻理ちゃん?蛮だけど。良かった、
今ようやく電車から降りたんだ。人ごみの中では話しにくい
内容でね、でもメールじゃ上手く伝わらないし。
いいかい、こちらから一方的に話す。
君はハイかイイエで答えればいい。
いいね?』

「ハイ」
『って言ったらスタートだからね』

「こらおっさん」

『や、ごめんごめん。緊張を解いてあげようとしたんだよ。
まず最初に言っておく。今から話す内容は、とても
信じられないことだけど、素直に受け入れて欲しい。
いいね?』

「ハイ」
素直さなら自信がある。麻理はコックリと頷いた。