「でね、彼女がそういった物ばかり食べさせるんですよ」

津川君は割合と丹精な顔つきなのだ。
どちらかと言うと、美男子の範疇に入れてやっても良い。
多少、しかめっ面をしたところで、反って男振りが上がるぐらいだ。
立川先生は津川君の顔をしみじみと見つめている。
先生の顔はどちらかと言うと、不細工な方に入るかもしれぬ。
ただ、その少年のようにキラキラと輝く瞳には、なんとも言えぬ
不思議な魅力が有った。
ただ単に、いつも悪戯を考えているだけなのだが他人には
それが判らない。

その瞳でしみじみと見つめられると、相手は大抵の場合、
勝手に悩み事を相談してしまったりする。
先生、それを題材に小説を書いたりするから困ったものだ。
今回、津川君が図らずも相談を持ちかけてしまったのも
そのせいだ。

この間、手酷く騙された癖に、と読者諸兄は思われるかもしれぬ。
が、立川先生、ちゃぁんと後の事も考えて悪戯を仕掛けている。
二日後、遊びに行くという妻に頼んで、巷談社に書き上げた原稿を
持っていかせたのだ。
その時の津川君の驚愕たるや…彼は警察に届けるか否か、
散々悩み抜いていたそうだ。

二へ