「さてと、ぼちぼち行くか畑中君」
颯爽とはいかないまでもそれなりに、源さんと浩は事務所を出た。
たちまち夏の日差しが照りつけてくる。

「おうおう。今日も頑張っちょるなぁ、おてんとさんのやつ」

源さんが運転する軽トラはクーラーが故障している。
窓を開け、風を入れる。
AMラジオから流れてくる演歌を聴いていると、自分が
ずっとこの仕事に就いていた気がして浩は何だか愉快だった。

今日が二週間目の現場は、ほとんど仕上がっている。
通水と洗管、空気抜きも終了している。
後は水圧試験だけである。
源さんは鼻歌で余裕綽々の様子だ。
この人の仕事は完璧なのだ。
当然、漏れなど生じる筈がない。

「さてと、あと三日で畑中君もバイト終りやな」

「そうっすね。なんか早かったなぁ」

「どや、このまま水道屋で働かへんか。君なら立派な」

「立派な?」

「穴が掘れる」

「ひでぇや源さん」
わはは、と笑った顔が余計にオランウータンに似てくる。

「さ、飯にするべぇ」

「おいっす」
現場のすぐ近くを流れる小川を眺めながら、浩は弁当箱を開けた。
分厚い塩鮭が飯の上に乗っかっている。
よく塩を効かせてある鮭は、たっぷりの白い飯に良く合った。
隣で源さんは梅干を口に入れながら浩の弁当を覗き込んだ。
「ほぉぉ、酸っぺぇ。お、今日は塩鮭かいな。さすがやな」

(何がさすがなんだろう)
気になり始めた。
そう言えば、あの時の言葉も気になる。
この機会に浩は全部聞いてしまうことにした。