「契約成立。制裁は明日の昼休み。楽しみにしておくといいわ。おぢさま」

言い終えるや否や、少女の姿は陽炎のように揺らいで消えた。

糸を切られたマリオネットのように、利一はペタンと座りこんだ。

翌日の昼休み、利一はドキドキワクワクしながら横曽根を見守っている。経理の立杉が横曽根に近づいた。

「横ちゃん、メシ行く?」

どんな嫌な奴にも、不思議と友達が居るものだ。横曽根の数少ない友の一人が、この立杉である。
二人は仲良く連れもって出て行く。
利一は尾行を始めた。

二人が向かったのは、ザ・ごはん屋という店だ。色々な惣菜を選べるのだが、横曽根は必ず豚汁と納豆を選んだ。

二人から少し離れたテーブルに利一は座った。
いつの間にか、霊子が対面に座っている。

「なるほどね。よし、納豆に決めたわ」

霊子の瞳が真っ赤に変わった。

「さぁて、納豆納豆」
嬉しそうな横曽根の周りで悲鳴が上がった。
立杉も後退っている。

「よ、横ちゃん!何やってんだよ」

「え?何が?」

横曽根だけが気付いていない。

自分が、手のひらで納豆をこね回している事に。
くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃと粘ついた音が店内に響いた。