一刻の猶予も無い。
麻理は、子羊のように震えて思うように足が動かない志郎を
半ば引きずるように連れ出した。
館の中は静まり返っている。
幸い、廊下には玄関同様、毛足の長い絨毯が敷き詰められており
足音が響くこともない。
それでも出来るだけの注意を払い、二人は玄関を目指した。
「静かに歩きなさいよ、いいわね?」
「うん」
「絶対、ずぇぇぇったいに、クシャミなんかしちゃ駄目だかんね」
「う…ん」
「…一瞬、間が空いたわね。何か言いたいことでもあるの?」
志郎は両腕を上げ、顔面をガードしながら答えた。
つまりは殴られるのを前提にした発言である。
なかなかの学習能力と言えよう。
「あのさ、もしもあの人がドラキュラだとしたらさ」
「なによ」
「僕らが逃げることなんかお見通しじゃないかな」
「う」
真理である。
事の本質を鋭く見極めた発言である。
が、人は往々にして、図星を指されるのを嫌う。
「な、なま言ってんじゃないわよっ!」
麻理の平手が志郎のガードの外側から、ブーメランフック気味に襲う。
びったぁぁぁん!
派手な音を立てて志郎の左頬が鳴った。
せっかく固めたガードが何の役にも立たない。
所詮は付け焼刃である。
「あいたたた。麻理ちゃんの馬鹿」
「なにをぅっ!」
「だって音を立てるなって言ったのは自分じゃないか」
「あ」
またもや真理である。
どうも調子がおかしい。
元々、麻理は人に手をあげるようなタイプではない。
それがこと志郎に関しては、情け容赦なく殴打してしまう。
自分でも抑えきれない衝動が体を動かしてしまうのだ。
麻理は、子羊のように震えて思うように足が動かない志郎を
半ば引きずるように連れ出した。
館の中は静まり返っている。
幸い、廊下には玄関同様、毛足の長い絨毯が敷き詰められており
足音が響くこともない。
それでも出来るだけの注意を払い、二人は玄関を目指した。
「静かに歩きなさいよ、いいわね?」
「うん」
「絶対、ずぇぇぇったいに、クシャミなんかしちゃ駄目だかんね」
「う…ん」
「…一瞬、間が空いたわね。何か言いたいことでもあるの?」
志郎は両腕を上げ、顔面をガードしながら答えた。
つまりは殴られるのを前提にした発言である。
なかなかの学習能力と言えよう。
「あのさ、もしもあの人がドラキュラだとしたらさ」
「なによ」
「僕らが逃げることなんかお見通しじゃないかな」
「う」
真理である。
事の本質を鋭く見極めた発言である。
が、人は往々にして、図星を指されるのを嫌う。
「な、なま言ってんじゃないわよっ!」
麻理の平手が志郎のガードの外側から、ブーメランフック気味に襲う。
びったぁぁぁん!
派手な音を立てて志郎の左頬が鳴った。
せっかく固めたガードが何の役にも立たない。
所詮は付け焼刃である。
「あいたたた。麻理ちゃんの馬鹿」
「なにをぅっ!」
「だって音を立てるなって言ったのは自分じゃないか」
「あ」
またもや真理である。
どうも調子がおかしい。
元々、麻理は人に手をあげるようなタイプではない。
それがこと志郎に関しては、情け容赦なく殴打してしまう。
自分でも抑えきれない衝動が体を動かしてしまうのだ。