出会う度、二人はお汁粉競争を続けた。

妙なルールも出来た。

『残小豆確認は相手が行う』

『下品な音を立てて啜らない』

『負けた方は、次の勝負お汁粉をおごる』


関根が予言した通り、井坂はめきめきと腕を上げた。

一進一退を繰り返し、冬は過ぎ、柊が咲いていた庭先には、蝋梅の香りが満ち始めた。

もうそろそろ、お汁粉競争も終わりだな、二人は顔を突き合わせては寂しげに呟いた。

その朝。
井坂は、いつものように自販機の前で関根を待っていた。

今朝は自分と同じく夜勤明けの筈だ。

この気候だと、今日か明日、お汁粉は自販機から外される。
今季最後の勝負になる筈の朝であった。

「お」

遠くで関根が手を振った。

いつもの癖で、やや左側に傾いた歩き方で近づいてくる。
知らず知らず、井坂は微笑んだ。


「井坂さん、今日が最後だ」

「ああ、この気候じゃなぁ」


「違う。私が今日で最後なんだ」
一拍置いて関根は続けた。
「うちのライン、生産中止だと。私、今日から自宅待機だ。多分、そのまま早期退職させられるだろうな」

井坂は、笑顔のまま固まった。