あまり遠くまで行く
なよ、私は息子にそう
言い聞かせて先に
戻った。

一本道しかない、丘の
ような山で迷う筈が
無い。晩飯までには
まだ四時間もある。
私は気楽にそう考えて
いた。それが甘い考え
と知った時には、既に
辺りには暗闇が忍び
寄っていた。


必死になって探し
廻ったが、息子の姿は
発見できない。
地元の警察や村人に
頼み捜索が始まった。

まんじりともせず、
夜明けを迎えようと
した時、道の向こう
から息子がトボトボと
歩いてきた。

泣き叫ぶ妻や祖母に
抱きしめられ、息子は
キョトンとしていた。

息子は、そう高くない
崖から滑り落ち、
そのまましばらく気絶
していたらしい。

「男の子が現れて手を
貸してくれたんだ。
お父さんの名前で
僕を呼んでた。」

良太だ。

私は直感でそう思った。

息子に案内され、
夜を明かした場所に
ついた。



「ここだよ」


息子が指差す先には、
幼かった私が作った
秘密基地があった。

「すごいんだよ、
マンガが沢山あった
んだ。」

息子が中に入って
持ち出してきたのは
あの頃の私の宝物達
だった。