ジローは工場へ送り返された。
亜紀子と家族からの強い要望、
さらには世論の後押しもあり、
スクラップにされる事だけは免れた。

亜紀子に静かな日常が戻ってきた。
もう、朝から怒鳴ることもない。
だが以前と違い、その静けさには
彼女を狂わせる絶望が混ざっていた。

メーカーからは、代わりのロボットが無償で届けられた。
最新型のそれは、家事一切をソツなくこなし、
亜紀子は働く必要が無くなった。

何もしない日々、
何の感動も無い日々が繰り返され、
いつの間にかまた、亜紀子は杖が離せなくなった。
二年が経ち、少しずつ、少しずつ亜紀子は壊れていった。

「母さん、街へ散歩に行こうか。」
真一もさすがに今は、仕事の合間を見ては母の許に通ってきていた。
だが、どう呼びかけても亜紀子は返事をせず、頷きもしない。
小さくため息をつき、真一は車椅子を押し始めた。

「行ってらっしゃいませ、御主人様」
最新型のロボットが手を振り、見送る。