だがその前に、幽鬼のように立ちふさがる影一つ。
「き、貴様は芥川!」

「やぁ。お坊ちゃまの集まり、高級サロンの
白樺派の皆さん。次は私が相手だ」

芥川は耽美派の雄たる面目を発揮した。
「文章の中にある言葉は辞書の中にある時よりも
美しさを加えていなければならぬ!」
凄まじい一撃である。
白樺派全員が倒れた。

よろめきながらも立ち上がる志賀直哉。
「芥川くん、それでもなお、戦争は良くないのだ。
日本の自由と平和の為なら私はこの老いさらばえた
命を捨てる覚悟である。参る!」

志賀が大声で言霊を発する。
「中の海のむこうから海へ突き出した
連山の頂きが色づくと、美保の関の白い
燈台も陽を受け、はっきりと浮び出した」

芥川は涙した。
「う、美しい。何故あなたはそれほどまでに
美しい文章が書けるのだ…」

芥川も静かに立ち去った。
余す敵は三島ただ一人。