「おはようございます」

「…おはよ」

「やだな、麻理ちゃん。もっと元気良く!」

「っるさいわねぇ。あたしゃ朝、テンション低いの。
あんたみたいに始終脳天気なままじゃないの」

ALIPROJECTの音楽が流れる店内に居るのは、
麻理と、驚いた事に志郎である。
眞子は、麻理がついウッカリ『花子ちゃん』と呼びかけた次の日に
辞めてしまった。
えらいこっちゃと頭を抱えた麻理の前に現れたのが志郎である。
その美形を活かして、志郎は着々と売り上げに貢献していた。

「麻理ちゃん、ボーカルの件考えてくれた?」

「わぁったわよ。やればいいんでしょ。やれば」

「ほんと?嬉しいなぁ、よーし、頑張るぞ」
無邪気に喜ぶ志郎を見ると、何となく微笑んでしまう。
あの日以来、志郎の中から清明は現れて来ない。
もう一度会ってみたい気もするが、あんな怖い目に遭うのは
二度と御免であった。

平和が一番よね。
麻理の穏やかな日常が始まろうとしたその時、携帯が鳴った。

『スーダラ節』である。

「店長…だね」

「…そうね」

「早く出なきゃ」

「…うん。もしもし」

『あ。麻理ちゃん?!志郎君も居る?』

「はい」

『今すぐ旅行の用意しといて。行き先はロサンゼルス』

「はぁ?」

『ちょっとデカイ相手なんだわ。麻理ちゃんと志郎くんにも
手伝ってもらうから』

「ちょ、ちょっと店長」

『じゃよろしくー』

ぷつり。
つーつーつー

身動きもせず、携帯を見つめ続ける麻理である。
志郎が心配して肩を揺さぶった。
「どうしたの麻理ちゃん。麻理ちゃんてば」

「あ?ああ、あのね、店長がね、吸血鬼退治手伝えって。
ロサンゼルスに行くから用意しとけって」

「え。マジ?うっわぁ、何持ってこかなぁ、僕海外旅行
初めてなんだ」

小躍りする志郎にソッと近付き、後ろ頭を売り上げ帳で
どつく。

ぱっこぉぉぉん♪
と良い音がした。

「いってぇぇ…何すんだよ麻理ちゃん」

「あんたね、判ってんの?又あんな怖い目に遭うかも知れないのよ?」

憤然と詰め寄る麻理に向い、志郎は男のくせして花のように微笑んで言った。
「僕、麻理ちゃんとだったら地獄でも怖くないよ」

「て、てめぇ」
顔を赤らめた麻理は照れくささを隠すように
ALIPROJECTを歌いあげた。
その声は窓を抜け、青く澄み渡った空に伸びやかに飛んでいった。


闘え!麻理ちゃん お・わ・り