ある年の冬。
手入れをしようと、
舟に向かった太吉は
一人の女を見つけた。
女は墓地の中にある
桜の木の下で倒れて
いた。

行き倒れか、と太吉が
呟いたのも無理は
無い。
それほど寒い日で
あった。

太吉は急いで女に
近寄り、声をかけ、
その体に触れた。
温もりがある。
小さく寝息も立てて
いる。

急いで女を家に
連れて帰り、囲炉裏
の側に寝かせた。

しばらくすると、女の
頬はほんのりと色を
取り戻し、うっすらと
目を開けた。

「ここは…」

ぼんやりと問い掛ける
女に答えようとして
太吉は言葉に
詰まった。

ようやく、女の美しさ
に気づいたのである。

「こ、ここは俺の家だ。
おめぇは墓地の中で
倒れてたんだ。
俺がここまで運んだ。」

「そうでしたか…
それはありがとう
ございました。
お世話になりました…」

土地の訛りが無い。

「おめぇ、あんな所で
何してたんだ。この
辺りのもんじゃねぇ
よな?」

女はそれには答えず、
もう一度、礼を言うと
家を出て行こうと
立ち上がった。
が、足元がふらつき
力無く倒れこんだ。

「無理しちゃなんねぇ。
もう少し休んでいくと
ええ。俺んとこは他に
家族も居ねぇから。」

女は黙ってうなずき、
再び眠り始めた。
太吉はその寝顔を
いつまでも飽かず
眺めた。