白者村は、岡山県にある美しい土地だ。
どこを切り取っても、そのまま絵葉書になりそうな風景が続く。
駅前からタクシーに乗り、20分ほど山道を走り、目的の集落に着いた。

村人達がぼんやりとタクシーを見送る。若い者の姿が少ないのは、
過疎化が進んでいるせいだろう、そう林田は考えた。
だが、その割に立ち並ぶ家々は裕福な作りだ。
奇妙な違和感を持つ集落の外れに斉藤家はあった。

村の家も確かに立派であったが、斉藤家はその比では無かった。
よくぞこんな山奥に、と思わせるほどの豪奢な作りの日本家屋である。

「凄いな…」
思わず呟いた林田に運転手が笑いながら答えた。

「ここら辺は、何故か昔から、裕福な家が多くてねぇ
でも、結局はみな斉藤さんの土地だからねぇ。
村の人もみな、お世話になってるはずですわ。」

「そうなんですか…あの…、この家にお嬢さんはおられるでしょうか?」

「うん?あぁ、何人かはいるはずですよ。三人、だったかな?」
林田は運転手に礼を言って車を降りた。
到着した音が聞こえていたのだろう、
重たそうな門扉が開き始めていた。