先生と十兵衛は何度も何度も、風にまかれ叩きつけられていた。
そばに寄ることも出来ない。
一度、隙を見て先生が突っ込んだが、はじき返された。

「やはり、あの鼻だな。あれを断ってしまわねば…」

「そうですね、うっ!」
「どうした、猫殿」

「今、すねこすりとキジムナーが死にました。最後に想念を
送ってきました」

「なに!あの者達、まだ居たのか!」

先生の顔色が変わっていた。
「天狗。聞け。おまえの頼みの綱である勾玉、
わが仲間が命をかけて砕いた。今頃、大涌谷の噴火口の中だ」

「何を戯けたことを」

「嘘ではない。おぬしの手下がほれ、そこに来た」

天狗が後ろを振り向くと、そこにはうなだれた烏天狗達が舞い降りてくる
ところだった。
「おぬしら、今の言葉、まことか」

「も、申し訳ございません」
「ちっぽけな者ゆえ、油断しました」

「この馬鹿者どもがっ!」
天狗の羽団扇が一閃した。それだけで烏達の首が飛んだ。

「こうなればもう、他の力には頼らぬ。この箱根天狗、
神通力でもってこの国を支配する。まずはお前らからじゃ」

激しい風が巻き起こる。十兵衛の足元をすくった。
体勢を崩したところに、天狗の刀が飛ぶ。
先生も間に合わない。
これまでか、と思われたその時、
盾になり刀をはじいた者が居た。

傘化けであった。