その他にも、蛇を呑んだら主催者側のミスでそれがマムシだったとか。

(この時は大量に焼酎を呑んで、マムシを酔わせてから病院に行ったそうだ)

「腹ん中でマムシ酒になるかと思た」
そう笑いながら開腹した痕を見せてくれた。

酷い興行主に腹を立て、金庫の鍵を呑んだ話とか、巡業先で口を開けて寝ていたら人魂が入った話とか、嘘か本当か判らない話が盛り沢山だ。

おかげでルポは大成功に終わり、書き上げた本もそこそこ売れた。

幸ちゃんに一冊贈ったら、よほど嬉しかったのだろう、手を握られたままオイオイと泣かれてしまった。

タコ坊主と恵比寿様に抱きつかれたまま、最初は閉口していた私だったが、いつの間にか一緒に涙ぐんでしまった。

そして何年か経ち、忙しくなった私は人の良い夫婦とも疎遠になってしまった。

次に幸ちゃんの顔を見たのは、テレビのニュースだった。

ショーウィンドウに飾られた大型液晶テレビに、見覚えのある笑顔がアップになっている。

「幸ちゃん?!」

私は思わず立ち止まり、愕然として画面に見入った。
消音されている為、詳細が判らないが、画面の左下に『覚醒剤による死亡』という文字が出ていたのだ。