小さな町に小さな森があった。
森と呼ぶのもためらわれるぐらいの
小さな木陰である。
以前、家が建っていた敷地は
今では庭だけが残り、樹木や草花は
手入れの無いまま、ささやかな緑園を作っていた。

いつの日からか、そこに、猫の姿を
見かけるようになった。
心無い人達が捨てていく猫達である。
その数は徐々に増え、10匹を越えた。

捨てられたとはいえ、幸いにも近所の誰かが
必ず食べ物を与え、餓える猫は居なかった。
餌を与える事に対して悪し様に言う者もいたが、
猫達は決してそこから出ようとはせず、
静かに穏やかに、近所に迷惑をかけず
暮らしていた為、同情する意見が多数を占めていた。
私有地であったことも幸いした。

集団のボスはハナクロという猫である。
その呼び名通り、鼻先に黒い斑点がある。
仲間の面倒見が良く、人懐こいハナクロは
餌をあげる人間達にも愛されていた。

ハナクロはいつものように、仲間の猫達の
様子を看て廻っていた。
捨てられた猫達には、傷を負った者も多く、
何匹かはそのまま死んでいくのだ。
ハナクロは何くれとなく、そのような猫達の
面倒を見ていた。