次の日、里美は泣きはらした顔のままキャンパスに向かった。

一講目は休講だった。
気が抜けたまま、庭にあるベンチに座る。

向こうから良樹が来るのが見えた。

ニコニコと笑っている。

良樹は近づくなり、里美の隣に座り、肩を抱いた。

昨日は江梨子の肩を抱いていた手。

嘘つきなくせに優しい手。

「参るよなぁ、一講目から休講ってさ。こっちも疲れてんのを我慢して出て来てんのにさ」

「…なんでそんなに疲れてんの?」

どんな顔をするだろう、少しは狼狽えるかな。

里美の想いも願いも良樹は見事に踏みにじった。

ニコニコと笑ったまま、こう言ったのだ。

「一日中、部屋ん中さ。お前の事ばかり考えてたよ」


なんだ。
なぁーんだ。
こいつも着ぐるみ被ってるじゃん。

『優しさと思いやりと愛情に溢れ』マンの着ぐるみだ。

「決めたわ」

「何?何を決めたんだい?」

「目を閉じて、良樹。イイものあげる」

「マジ?イェ~♪」
良樹は、何を期待しているのか知らないが、ウットリと目を閉じて上を向いている。

「それでいいわ」


せーのっ!

「ボキンパーンチっ!」

良樹のアゴに素敵な角度で里美の拳が入った。


ベンチごとひっくり返った良樹に、指輪を叩きつけ、後も見ずに里美は歩きだした。

涙は昨日、イヤと言うほど流した。
これ以上出ない。

携帯を取り出す。

「もしもし?涼子?焼き肉食いに行かない?もち、あたしのおごり。生ビール浴びようぜぇ~
え?金有るのかって?」


里美はニッコリ微笑んだ。

「悪の手先は儲かるのよ」


里美はいつの間にか、ボキンちゃんのテーマを口ずさんでいた。