「お疲れさまー」
バイトを終えて着替えている最中、祥子の携帯が鳴った。

「あれ?」
Tシャツに首だけ突っ込んだまま、動きが止まる。滅多に鳴らない着うただったからだ。
その着うたは『アンチェインド メロディ』。
ゴーストという映画で使われた有名な曲だ。

「あたしからのメールの着うたはこれにしなさい」
そう指定したのは、祥子の祖母、初音であった。初音は78歳という高齢ながら、やたら活発な女性である。
携帯を使うなどは朝飯前、今ではブログも持っているぐらいだ。
『初めての音』というそのブログは、若者や主婦から絶大な人気を得ていた。

祥子は、祖母が大好きである。
小さな体に溢れるバイタリティは、幼い頃からの祥子の憧れであり、目標だ。
祥子が上京を決めた時も、両親を説得してくれたのは祖母であった。

何事かと早速、メールを開く。

『初ちゃんだよ。』
という件名が目に飛び込んできた。

「初ちゃんて」
プフッと吹き出す。

『急で悪いけどね、今週の土曜日空けといておくれ。
案内して欲しい所が有るんだよ。
よろしく頼みます

「土曜日か…ま、猫までつけられたらしゃあないか」
と祥子は微笑んだ。