稼ぎは下がったが、62歳の自分と、同い年の妻が食べていくぐらいは稼げる。
あと二年もすれば、隠居して好きな畑仕事と孫の世話をするつもりだ。
インタビューの最後に、そう言って浦野氏は素敵に微笑んだ。


機材を片付けながら、私は試みに一つ尋ねてみた。
「今までで、一番の重量はどの位なんですか」

「そうだねぇ…55、いや、あの人は58kgは有ったかな」

「あの人?どういう事ですか」

実は、と浦野氏は恥ずかしそうな微笑みを浮かべ、話し始めた。

浦野がまだ40歳の時だ。
その日、福知山駅は騒然としていた。
前日に通過した台風の影響で、線路が一部不通になったのだ。
強い雨風が残っており、なかなか復旧のめどが立たない。

幸い、影響を受けた汽車は一本だけであった。

在庫を全て売り切った浦野は、ベンチに座り、のど飴を舐めていた。
自慢の売り声を保持する為に、煙草は吸わない。
のんびりと雨を見る浦野の耳に悲痛な叫び声が飛び込んで来たのは、その時である。

驚いた彼が、叫び声のあがった方を見ると、大きな腹を抱えて妊婦が降りてくるところであった。
駅員に連れられ、待合室に入って行く。
その間も呻き声は続いている。

顔馴染みの駅員に何が起こったか訊ねてみた。

四へ