「そう言えば、香子さん、よくこぼしていらしたわ。
御主人が病院嫌いで困るって。ハーブを使って
少しでも藤田さんの体調を良くされようとしたんじゃないかな」

藤田は、ふらふらと窓に近づき、庭を眺めた。
久しぶりに見る庭は、ハーブ達が伸び放題に伸びている。
どの花も命に満ちている。
そして、優しい。

香子は暑い日も寒い日も、毎日欠かさず、この庭に居た。
俺はいつも馬鹿にしていたものだ。
子供が居ない俺達だから、せめて花を育てることで
安らぎを得ているのだとばかり思っていた。

なんということだ、全て違っていた。
香子は、俺だけを見つめ、俺の為にこの庭を育ててくれたのだ。
死んでなんかいない。
香子は、まだここに居るじゃないか。
ここで、俺を見守ってくれている。

「俺は、今、ようやく気づいた」
その瞳から涙がこぼれて落ちた。
後から後から溢れる涙に困惑するように藤田が笑った。

「もうとっくに枯れてしまった筈なのにな」