邪鬼が立ち上がり、大声で叱咤する。
「慌てるな。あの方角、あそこの木っ。
誰か倒してこいっ!」

はは、と何人か向かう。
その前に太郎丸が立ちふさがった。

「誰だお前。」
「そこをどけ、わっぱ」
「貴様も仲間か」

口々に恫喝する男達に向かい、ニヤリと微笑む
太郎丸。
「俺の名は、太郎丸。鬼退治に来た」

「なんだ?鬼退治だぁ?」
男達が大声で笑う。

「桃太郎かよ、おまえ」
「おめぇみてぇなガキに何ができるってんだ」
「第一、その長い刀、抜けるのか?」

「抜けるさ」
そう言いながらも太郎丸は柄に手をかけようともしない。
「でもお前達には匕首で充分だ」

「小癪なことを」
男達が殺到する。

ところが誰一人太郎丸に近づく事すらできない。
一瞬たりとも同じ場所に居ないのだ。
見ることすら適わない。
舞うように男達の間をすり抜けていく。

そのたび、手首を落とすもの、親指を落とすもの
で溢れた。
たちまち十数人が倒れこむ。
元々、武士の魂など欠片も無い者の集まりである。
悲鳴をあげて逃げ出す者も出てきた。