「言えば話が長くなるが…この男と、女二人。
すでに人では無くなっておる。頭領殿、妖しのもの、と
呼ばれる存在をご存知か」

何を急に言い出すのだ、とでも言わんばかりの口調で
仁衛門が答えた。
「…知っておる。いわゆる妖怪のことだな。山に暮らす我等には
身近な存在だ」

「この者達、その妖しのものに変化しておった。
この顔に間違いない。
一人は腕長。一人は飛頭蛮。そしてこの女御は鬼女蛇。
道中、襲ってきた為に、我等が切り捨てた」

その言葉につられ、太郎丸も似顔絵を見る。
「あ。ほんとだ。あの蛇女だ」

「なんと…では彼らが妖怪になっていたと言うのか。
そんな事が可能なの…か」
と言いかけた仁衛門が言い淀んだ。
天海僧正の顔が脳裏に浮かんだのである。
あれ自身が妖怪ではないか。

仁衛門は十兵衛の言葉を信じざるを得なかった。


四十二へ