「く、くそてめぇら」

うろたえる男のみぞおちに、哲郎の右足がめりこんだ。
いつ動いたか判らないぐらいの速さで前蹴りを放ったのだ。
大量の胃液を吐き出しながら、男はのたうち回った。

「な、なんだよぉ、なんでガキがそんなに強いんだよ」
残った男の台詞は途中で途切れた。

己を倒したものが、小さな拳であったことは
男には最後まで判らなかったに違いない。

「押忍」
最後に大きく十字を切り、哲郎は人ごみをかき分けて
その場を離れた。

誰からか、拍手が起こった。
最初は小さく、そしていつしか大きな波となった
拍手は、哲郎の姿が見えなくなるまで続いた。

一躍、町のヒーローとなった哲郎であったが、
その暮らし振りは全く変わらなかった。

ただひたすらに鍛錬を積む。
いつの日か、師範と再会できることを信じて
哲郎の鍛錬は続いた。



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