幸か不幸か、椅子から滑り落ちた為に目が覚めた。

「だめだ。こんなもんでは起きられない。何かもっと効果的な…」

哲司の視線が部屋を彷徨う。

「あ。あれ、いいかもしれん」
哲司の目に留まったのは、片隅に置かれた大きなゴミ箱である。
金属製のそれをビニール紐で結び、照明器具を
滑車代わりに頭の上に吊るした。

「こうやってだな、紐の先を輪っかにして手首に結んでおけば。
深く寝入った途端、腕が上がって目が覚めるってわけだ」

我ながら良いアイディアだ、よしよし、と自らを誉めそやし、
哲司は椅子に腰掛け、ゆったりと寛ぎ始めた。

うつらうつら

組んだ腕から力が抜けていく。
徐々に腕が上がっていく。
まだ目が覚めない。
そして遂に腕が真っ直ぐ上がった。
途端に紐が解けた。

「おはようございまーす…なにこれ」

出社してきた同僚の目の前で、
頭にゴミ箱をかぶり、安らかに眠る哲司が居た。
残念ながら哲司は、その夜も残業であったという。


断っておくが、決して実話ではない。